とある厳冬期の一日。
たき火に慣れている人が炭窯にやってきて炭火にあたりながら言いました。
「たき火のほうがあたたかいですね」
薪を炭にする段階でそれなりの熱量を使ってしまうので
熱エネルギーの量で比較すると薪のほうが断然多いのです。
そのことを説明すると彼はこう言いました。
「炭って効率悪いんですね」
それを聞いて私は
「でも煙臭くならないですから」
くらいしか説明できなかったのですがその後に「炭って効率悪いのだろうか?」ということについて考えてみました。
確かに薪ストーブに炭を入れて燃やしても部屋はなかなか暖まりませんし、お湯を沸かすといったことであれば炭よりも薪のほうが断然早く沸かせます。
凍えた体を温めるにはたき火のほうが良いのです。
暗闇をともすたき火は心に安らぎを与えてくれます。
いっぽうで炭はぎりぎりまで熱源に近づいて暖を取ることができます。
長い時間安定して暖をとることができます。
服が臭くなったり火の粉で穴をあけることもありません。
そういう違いはあるものの「効率」という意味ではどうでしょうか。
1リットルの水を沸騰させるという場合はたしかに炭は効率が悪いと言えます。
しかし1リットルの水を沸かすために必要な木の量はどうでしょうか。
たき火を安定させるにはそれなりの木が必要になります。
そしてそこから得られる熱エネルギーのほとんどは利用されずに空を焦がすことに使われてしまいます。
ですが炭なら指ほどの太さの枝だけで安定した熱エネルギーを得ることができます。
これは薪では絶対に不可能なことです。
さらに炭に灰をかぶせておけばその火を一時休止させることも可能です。
必要な時に灰をどかし、息を吹きかけてやればまた熱エネルギーを放出はじめます。
どちらが効率的かは一概には決められません。
薪には薪の良さがあり、炭には炭の良さがあるのです。
私はたき火も炭火も大好きです。
ただ炭火の良さを知る人が少ないなと思っています。
炭火と向き合うにはよい季節になってきました。
バーベキューにだけ炭を使うのはもったいないのです。
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